供養

承継しなくてもよいお墓・方法(6)
― 自宅安置 ―

承継しなくてもよいお墓・方法

火葬場で火葬を終えると、残った遺骨をどうするのかを考えなければなりません。どうするかは、お墓がある場合とない場合で、異なります。
ここではない場合について説明します。
お墓がない場合には、まず「承継者の有無」を確認することが重要です。承継者がいないと「無縁墓」となってしまうからです。
調査の結果、約4割が無縁墓だったという自治体もあり、大きな社会問題になっています。

承継のポイント

では「承継者の有無」は、どのように考えれば良いのでしょうか。
あなたの親の遺骨の場合には、最低二世代先まで考えなければなりません。つまり、あなたがお墓に入った後に、子供がそのお墓を継いでいくのかどうかです。
ここでのポイントは、子供がいるというだけではなく、子供が継いでくれるのかどうかです。
子供がいても、「別の宗教を信仰していて継げない」とか、「引き継ぐ気持ちがない」かもしれません。ですから、子供に相談して意思を確認することが大切です。

承継するお墓・しないお墓・お墓以外の選択

「承継者の有無」が確認できたら、どうするかの選択に入ります。

「有」の場合は「承継する」お墓
「無」の場合は「承継しない」お墓
「承継しない」選択には、お墓以外のものもあります。

ここでお墓というのは、お墓に関する法律である「墓地・埋葬法」に基づき、遺骨を埋葬または埋蔵するものです。
それらをまとめると下図のようになります。

遺骨をどうするのか<br>4つのマトリックスと選択遺骨をどうするのか
4つのマトリックスと選択

承継しなくてもよいものには、図のように、お墓以外の方法もあります。
今回は、その一つのである「自宅安置」について説明します。

自宅安置とは

遺骨の納骨は、初七日以降が多く、四十九日や一周忌の法要に合わせて親族や友人などに見守られながら行われることが一般的です。
では、納骨や散骨せずに、自宅にそのまま置いておくことはできるのでしょうか。
法律(墓埋法)では、「埋葬または焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」と定められています。
この法律によると、墓地でないところに遺骨を埋めることはできませんので、自宅の庭に遺骨を埋めることは違法となります。
しかし、自宅に置いておくだけならば、遺骨を埋めるわけではないので、違法にはなりません。
現に、自宅に遺骨を安置しておく人がおり、特に近年は増えてきています。
「故人を手元に置いて、心の支えになってもらいたい」「お墓に閉じ込めて置くのはかわいそう」などの理由のほか、「すぐにはお墓を建立できないから」「お墓を建立できないから」という経済的理由も多くなってきています。
このような理由から、遺骨を埋葬したりせずに、自宅に安置しておくことを「自宅安置」と言います。

「自宅安置」と「手元供養」の違い

遺骨を自宅に安置しておくパターンには、遺骨のすべてを安置するパターンと、遺骨の一部だけを自宅に置いたり、身に付けたりするパターンがあります。
両方を含めて「自宅安置」としているところもありますが、当サイトでは、前者を「自宅安置」、後者を「手元供養」として区別しています。

納骨しないと成仏しないのか

遺骨をいつまでも納骨しないと、「故人が成仏しない」「故人が落ち着かない」とか、はては、「ばちがあたる」「崇りがあるかもしれない」などとまで言われることもあるようです。
しかし、それらは迷信や俗説です。
人には、それぞれの宗教的価値観があり、供養の方法があります。また、経済的な事情などもありますので、その人なりの供養の方法を選べば良いのです。

遺骨の保管方法

遺骨の保管方法には、次のようなものがあります。

骨壺に入ったまま保管する

故人の遺骨をすべて自宅に安置する時は、一般的には、骨壺に入れた遺骨を、火葬場から自宅に持って帰ってきたままの状態で保管します。

自宅安置用の骨壺に保管する

自宅安置用の骨壷もあります。ガラス製やきれいな装飾がついた骨壷や、サッカーボール、ゴルフボールなど故人の趣味を偲ぶ骨壺などがあります。
そうしたデザインの骨壷を使えば、人目につきやすいリビングなどにおいても、オブジェとして部屋のなかに溶け込ませることができます。

粉骨して小さな骨壷に保管する

全骨を保管した骨壷は、遺骨の量も多いので、安置するのに場所を取ります。
「故人の遺骨をすべて安置したい。でも、大きな骨壺のまま置いておきたくない」という場合は、遺骨をパウダー状の粉骨にすることで、体積が大幅に減り(3分の1~4分の1)、遺骨を入れる物を小さくすることができます。
そのための骨壺も販売されています。もちろん、遺骨を入れるには必ず骨壷を使わなければならないということはありません。

骨壷等の安置場所

火葬場から遺骨を自宅に持ち帰ると、後飾りの祭壇をつくり、そこに骨壷を安置します。祭壇は四十九日を過ぎると片づけるのが通例です。
では、その後は遺骨を納めた骨壷等は、どこに置いたら良いのでしょうか。

仏壇に骨壷等を安置する

仏壇は、本来は信仰の中心である本尊を祀る場所で、位牌や遺骨を置くのは、宗教上適切ではないとされています。しかし、死者信仰の強い日本では、いつの頃からかそれらを置く場所として定着しました。
従って、仏壇に位牌や遺骨を置くことは構いませんが、全骨で骨壷のままではスペース的に安置できない場合は、専用の台を作るなどして置きます。
また、最近は、全骨を納めた骨壷をそのまま収納するスペースがついている仏壇も販売されています。

リビングや寝室に安置する

仏壇は、先ほど説明したように、本来は、位牌や遺骨を置く場所ではありません。また、近年は、仏壇を持っている世帯も減ってきています。
そこで、リビングや寝室に、専用のスペースを設けて安置する人も多くなっています。
先述したように、リビングや寝室などにおいても、オブジェとして部屋のなかに溶け込むデザインの骨壺も販売されています。
また、納骨スペースがついた仏壇には、洋風なデザインの家具などと並べても、違和感無く設置できるモダンなデザインのものもあります。

自宅安置の留意点

自宅で安置するには、以下のような留意すべき点もあります。

湿度をできるだけ避ける

火葬した遺骨は、高温で燃やした後に陶器製の骨壷に入れ、さらに木製の骨箱に入れて保管されるのでほぼ無菌状態になります。
従って、悪条件が重ならない限りカビは生えませんが、しかし、湿気や何らかの栄養が揃えばカビは生えます。
カビは一度生えると繁殖力が強いので、どこにでも繁殖してしまう可能性があります。
それを避けるためには、以下のような点に注意しましょう。

桐箱を利用する

遺骨は、桐箱に入れておくことで、湿気を吸い取ってくれますので、湿気を防ぐことができます。
骨壷をむき出しのままにしていると、外気を吸い込む可能性がたかまります。

骨壺の蓋を密閉する

陶器製の骨壷は、蓋と入れ物の間には隙間があります。
そのため、外気温が変われば、骨壷内との温度差によって、外気と一緒に湿気も吸い込みます。
蓋と入れ物の間は、テープなどで密閉しておきましょう。

直射日光を避ける

骨壷は、先述したように、温度差を避けた方がよいので、直射日光を避けた風通しの良い場所に安置するのがベストです。
カビが多く生える場所は安置に適しておらず、押入れの奥や、結露の多い窓際、水回りの近くなどは、カビが繁殖しやすいので絶対に避けるべきです。

家族・親戚と話し合う

その人にとって故人が大切な人であったら、遺骨のそばにいたいと思うのも自然の感情です。
しかし、自宅に遺骨を置いておくということは、まだそれほど一般的ではありません。
そのため、家族・親戚の中には、「納骨しないと故人は成仏しない」「遺骨は土に還すものだ」などと反対する人がいるかもしれません。
また、親戚と言えども、遺骨がそのまま家の中に置いてあるのは、気味が悪いと思う人がいることも考えられます。
故人の遺骨のことでいつまでも、親戚同士の折り合いがつかなければ、故人も悲しく思うでしょう。
故人をどのような形で供養するのかは、家族・親戚とも話し合って理解を得るようにしましょう。

いつかは自宅に置けなくなる

供養する本人がいなくなると、たいていの場合、自宅に安置していた遺骨は行き場を失います。
最終的には、どこか行き場が必要になるのです。
行き場が決まっていないと、残された人たちが困ってしまいますので、自宅安置した遺骨のその後についても、家族・親族間で事前に話し合っておくようにしましょう。

ABOUT ME
桑原 侑希
桑原 侑希 大手葬儀社にて、10年以上葬儀業に従事し約2000件の葬儀を行ってきました。葬儀のことは勿論、ご葬儀までの終活の相談や、葬儀が終わった後のご供養方法、各種手続きについての相談を受ける内に、その道のエキスパートに。皆さんの葬儀・終活にまつわる「なぜ?」にお答えします。
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