葬儀

葬儀で選ぶ宗教・宗派の種類は?
特徴や選び方も紹介

葬儀で選ぶ宗教

葬儀で選ぶ宗教・宗派の種類は? 特徴や選び方も紹介

特定の宗教・宗教を信仰していない方が、いざ葬儀の準備をする段階になって戸惑うのが、どの宗教・宗派で葬儀を行うかということです。
一般的には、葬儀の多くは仏教のしきたりに則った葬儀、仏教葬で行われますが、仏教葬の中でもいくつもの宗派に分かれているからです。
今回は、葬儀で選ばれる主な宗教・宗派の種類や特徴を説明し、さらに宗教・宗派の選び方も紹介します。
葬儀で選ぶ主な宗教・宗派をすぐに知りたい方は「葬儀で選ぶ宗教・宗派は仏教、神道、キリスト教葬、無宗教の4つ」をご覧ください。
葬儀のイメージに合わせてぴったりの宗教・宗派の選び方をすぐに知りたい方は「葬儀の宗教をイメージに合わせて選ぶ方法」をご覧ください。

日本の葬儀が仏教葬で行われる理由と、宗教・宗派を選べるようになったワケ

日本消費者協会の調査によると、葬儀全体のうち、仏教のしきたりに則って行われる仏教葬が、95.2%を占めています。
神道のしきたりに則って行われる神葬祭は1.5%、キリスト教のしきたりに則って行われるキリスト教葬は1.2%です。
葬儀といえば、仏教葬というのが現状です。

仏教葬は、江戸時代に確立された檀家制度によって広まった

葬儀イコール仏教葬という現状になった理由は、江戸時代中期に確立された檀家制度にあります。
檀家制度は、江戸幕府が制度化したもので、誰もが檀家としてお寺に所属し、葬儀などの仏事は所属しているお寺、菩提寺に依頼することになりました。

菩提寺の役割が変わり、菩提寺と檀家の関係が薄れる

しかし、現代の日本で「自分は仏教を信仰している」という方は、どれだけいるでしょうか。
かつては、日本人すべてが仏教徒であったはずなのに、現在は仏教徒だと答える方は少ないのではないでしょうか。
こうした状況になった理由は、時代の変化とともに、菩提寺が果たしてきた役割が変化したことにあります。
もともと、菩提寺は仏教の教えを説く場所であり、地域コミュニティの場として認識されていました。それでは、現在の菩提寺の役割はどうでしょう。葬儀や法事をお願いするところ、お墓があるところという、仏事を依頼する先として認識されています。
このような認識の変化によって、菩提寺と檀家との接点が薄れています。
さらに、地方から都市部へ移り住む方が増えたこと、少子高齢化が進んだことが、菩提寺と檀家の接点が薄れる傾向に拍車をかけています。
こうして、もともとは仏教徒であった方も、次第に特定の宗教・宗派を信仰しないという考えに変化してます。

宗教者の紹介サービスによって仏教葬以外の宗教・宗派が選べるように

特定の宗教・宗派を信仰していない方が増えているとはいえ、葬儀全体の95.2%は仏教葬です。
菩提寺と檀家の関係が薄れたとはいっても、江戸時代からこれまで、仏教葬が行われてきたのです。特定の宗教・宗派を信仰していないとはいっても、葬儀イコール仏教葬と考える方がまだまだ多いのが現状です。
しかし、最近では、葬儀に対する考え方が変わりつつあります。
特定の宗教・宗派を信仰していない方の中には、仏教葬にこだわらず、神道葬やキリスト教葬を行いたいという方も見られるようになってきました。そうした要望に応えるように、葬儀社は宗教・宗派ごとに神主や牧師といった宗教者を紹介するようになりました。
もともと、葬儀社は菩提寺の檀家ではないが、仏教葬を行いたいという方に、葬儀のときだけお経をあげ、戒名を授けてくれる僧侶を紹介するサービスを行っていました。
この宗教者紹介サービスが充実し、今では多くの葬儀社が神主や牧師といった宗教者を紹介できるネットワークを組んでいます。
また、特定の宗教・宗派を信仰していない方の中には、宗教・宗派のしきたりにこだわらない、無宗教葬という送り方を選ぶ方もいます。
葬儀のイメージに合わせてぴったりの宗教・宗派の選び方をすぐに知りたい方は「葬儀の宗教をイメージに合わせて選ぶ方法」へ

葬儀で選ぶ宗教・宗派は仏教、神道、キリスト教葬、無宗教の4つ

今では特定の宗教・宗派を信仰していない方は、仏教葬、神道葬、キリスト教葬、無宗教葬と、主に4つのスタイルから選ぶことができます。
それでは、葬儀のイメージに合った宗教・宗派が選べるように、4つの葬儀のスタイルや内容、しきたりについて説明します。

仏教葬とは? 主な7つの宗派と送り方を紹介

仏教の葬儀は、悟りを開いた僧侶のための葬儀と、まだ悟りを開いていない修行僧のための葬儀の2種類ありました。
このうち、修行僧のための葬儀がもとになって、一般の方に向けた葬儀が行われるようになりました。
もともとは、修行僧のための葬儀がもとになっているため、仏教の葬儀では、故人が亡くなるとすぐに成仏するのではなく、成仏するための修行を行い、仏弟子になる必要があると考えられています。
成仏するために故人は、僧侶から仏教の信者として守るべき戒めを授けられた後、仏弟子としての名前として戒名(浄土真宗では法名、日蓮宗では法号)が与えられます。
最後に、仏弟子となった故人は、迷うことなく悟りが開けるよう法語を唱えてもらうことで引導が渡され、成仏します。
このように、仏教の葬儀は、故人を仏弟子にするための儀式をお通夜と葬儀・告別式の2日間にわたって行います。
仏教と一口に言っても、様々な宗派があります。ここでは、主な宗派の葬儀を紹介します。

天台宗

故人や、故人を見送る家族や親族などが一体となって、仏の本性を開発し、仏道を成じていくこと

真言宗

故人を打つ生命の源である大日如来の大生命に包まれている弥勒菩薩の浄土で都率天(密厳浄土)へ回帰させること

浄土宗

故人を仏の弟子として、仏の本願により阿弥陀仏の下である極楽浄土に往生することを教え導き、本来の住処、生命の源である極楽浄土へ立ち戻る凱旋式

臨済宗

故人が仏弟子となり、修行の道に入り、自己の仏性に目覚めることを願う儀式

曹洞宗

本来は仏教として受戒するが、それができなかった人にもこれを及ぼすために受戒し、引導により悟りに入らしめる儀式

日蓮宗

故人に対して、生死二法を明らかにし、法華経信仰を通して釈尊、日蓮上人との関係における安心を説き、過去・現世・未来の賛成にわたり法華経を護持することを勧め、霊山浄土への導きを成す

浄土真宗

往生即成仏であるから、授戒も引導もない。人の死を機縁として本尊阿弥陀如来に対して報恩感謝し、仏の教えを学ぶ聞法の場

仏教の宗派のうち、最後に紹介した浄土真宗だけは授戒も引導もありません。
先ほど、仏教の葬儀は、故人が亡くなるとすぐに成仏するのではなく、成仏するための修行を行うと紹介しましたが、浄土真宗だけは故人が亡くなるとすぐに成仏すると考えているからです。
仏教にはこのほかにも、立正佼成会や創価学会などの新宗教と呼ばれる教団があります。
中でも創価学会は、戒名なし、僧侶なしで行う友人葬と呼ばれる葬儀を行っています。

神道葬とは? 葬儀の内容と送り方を紹介

神道の葬儀は、神葬祭と呼ばれます。
神葬祭では、故人の魂を大切に考えます。そのため、故人の体から離れてた魂を、仏教葬でいう位牌にあたる「霊璽」という依り代に移されます。これは、遷霊祭と呼ばれ、神葬祭ではもっとも重要とされる儀式です。
故人が亡くなったことを帰幽と呼び、自然に還るとされています。神道では、故人の霊は家族のそばにいて守ってくれる存在になるという考え方からきています。
神道では、死の汚れを忌むため、聖域である神社では葬儀を行わず、斎場・葬儀場か自宅で行います。
仏教のお通夜にあたるのが通夜祭・遷霊祭、葬儀にあたるのが葬場祭と呼ばれています。

キリスト教葬とは? 2つの宗派と送り方を紹介

キリスト教で葬儀を行う方は、信者かその家族に限定されることが多いため、葬儀全体の1%ほどです。
キリスト教は大きく分けて、ローマ法王を頂点とするローマ・カトリック教会、これから分かれたギリシア正教などの東方教会、16世紀の宗教改革でローマ教会から独立したプロテスタント諸派の3つあります。
このうち、ローマ・カトリック教会や東方教会のカトリック系列は儀礼について長い伝統を持っているので、葬儀の儀礼が整っています。
一方、プロテスタントの葬儀は儀礼色がそれほどありません。

カトリックの葬儀は神父が執り行う

カトリックでは、故人が危篤になると、神父は塗油を行い、パンとぶどう酒で聖体拝受を行います。
臨終の時を迎えたら、神父は臨終の祈りを唱え、病人に罪の許しを与え、神のご加護のあらんことを願いつつ、祝福します。
カトリックにはお通夜の習慣はありませんが、最近では行われるようになりました。
協会が主体となって行う葬儀の場合は、葬儀の規模が大きく、入堂式、ミサ、赦祷式の3つの儀式からなり、告別式はありません。

プロテスタントの葬儀は牧師が執り行う

プロテスタントは、様々な教派があり一概に言えませんが、基本的には、故人のが危篤になると、牧師が聖餐式という臨終の儀式を行います。
牧師が信者にパンとワインを与え、安らかなに天国に召されるよう祈ります。
プロテスタントでは、仏教葬のお通夜に当たる前夜式を行います。一般的には亡くなった翌日以降に行われるものですが、亡くなった当日に納棺式に引き続き行われることも多くなっています。
プロテスタントの葬儀は、故人との別れを惜しむだけでなく、参列者がともにこの世に生まれたことを感謝し、やがて天国で神に仕える喜びを深める儀式なので、葬儀は聖書の朗読、神への祈りが中心です。

無宗教葬とは? 葬儀の内容と送り方を紹介

特定の宗教・宗派を信仰していない方の中には、宗教・宗派のしきたりを行わない葬儀で故人を送る方が増えています。
この葬儀のスタイルを無宗教葬と呼びます。決まった式の流れがないことから、自由葬といわれることもあります。
宗教・宗派に則った葬儀は、式の流れ、式次第がありますが、無宗教葬には決まった流れがありません。
仏教葬ではお通夜と葬儀・告別式の2日間のお別れの時間を過ごしますが、無宗教葬ではお別れの時間を1日でも、2日でも、自由にスケジュールを組むことができます。
また、仏教葬ではお経を読んだり、焼香を行ったりといった、故人を送る儀式が決まっていますが、無宗教葬ではこうした儀式を家族の考えで組み込むことになります。
無宗教葬で行われる葬儀の例としては、故人の好きだった音楽を流し、食事をしながら故人の思い出を語り合った後に、祭壇にお花を手向ける献花を行ったりすることが考えられます。

葬儀の宗教をイメージに合わせて選ぶ方法

特定の宗教・宗派を信仰していない方は、葬儀をどの宗教宗派で行うか、選ぶことができます。
しかし、お寺にお墓がある方は、葬儀をどの宗教・宗派で行うか選ぶ前に、必ず確認することがあります。
葬儀の宗教をイメージに合わせて選ぶ方法を紹介する前に、その理由を説明します。

葬儀の宗教・宗派を選ぶ前に、菩提寺の有無を必ず確認する

お寺にお墓があると、そのお寺が菩提寺かもしれません。菩提寺だった場合は、葬儀は仏教葬で行うことになります。
仏教葬の説明でも紹介しましたが、仏教の葬儀は、故人を仏弟子にするための儀式といえます。
お墓があるお寺が菩提寺の場合は、故人はそのお寺の僧侶から仏教の信者として守るべき戒めを授けられた後、戒名が与えられます。戒名が与えられ、仏弟子になることで菩提寺のお墓に納骨することができます。
菩提寺がある方が、菩提寺に確認することなく、ほかのお寺の僧侶によって葬儀を行った場合、菩提寺から戒名が与えられない可能性があります。
そうなってしまうと、菩提所のお墓に納骨することができないので、注意しましょう。

参列者もなじみがあるお経や焼香で見送るなら仏教葬で

菩提寺と檀家の関係が薄れているとはいっても、日本の葬儀の95.2%は仏教葬です。
家族や親族にとっても、会社関係や近所の方など、一般の方にとっても、仏教葬はスタンダードなお別れのスタイルです。お経や焼香で見送る仏教葬は、どなたもなじみがあるので、宗教宗派にこだわりがない場合は、仏教葬を選ぶことをお勧めします。

故人の人生を祭詞で振り返ってお別れするなら神道葬で

神道葬の祭詞は故人の経歴が語られ、それがわかる日本語として語られます。
お経は漢語の音訳で、聞いても意味が分からないので、祭詞がいいという考えから、神道葬を選ぶ方がいます。

故人の好きなお花を供えてお別れするならキリスト教葬で

キリスト教葬は、参列者が故人とのお別れに、お花を手向ける献花を行います。
仏教葬では、参列者が焼香をしてお別れをしますが、キリスト教では何もしないのはさみしいということで、日本独自の慣習として、献花が行われるようになりました。
このように、お花が好きだった方へお花を供えてお別れをしたいという方が、キリスト教葬を選ぶ方がいます。
また、故人がキリスト教系の学校を卒業していたりと、信仰はしていなくても、何かしらのかかわりがあった場合も、選ばれることがあります。

送り方を自分たちで作りたいなら無宗教葬で

無宗教葬は、お経や祭詞といった宗教の儀式を行いません。そのため、どんなかたちで故人を送るか、葬儀の内容を自由にプロデュースすることができます。
故人らしい葬儀にしたいので、葬儀の内容を家族で考えたいという方が、無宗教葬を選ぶことがあります。
また、宗教・宗派の葬儀のしきたりに意味を感じないという理由から、無宗教葬を選ぶ方もいます。

葬儀は、故人を弔い、別れを悲しむ場であり、故人への想いを心にとどめる場でもあります。そのために、宗教・宗派が果たす役割は大きいものです。葬儀をどの宗教・宗派で行うのか、今一度考えてみてはいかがでしょうか。

ABOUT ME
桑原 侑希
桑原 侑希 大手葬儀社にて、10年以上葬儀業に従事し約2000件の葬儀を行ってきました。葬儀のことは勿論、ご葬儀までの終活の相談や、葬儀が終わった後のご供養方法、各種手続きについての相談を受ける内に、その道のエキスパートに。皆さんの葬儀・終活にまつわる「なぜ?」にお答えします。
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