葬儀の一般的な流れ ~死亡直後の対応とマナー~
葬儀について知りたいことの消費者調査では、「葬儀費用」と並んで「葬儀の流れ」がトップに挙げられることが多くなっています。
葬儀は、昔は町内会など地域のコミュニティーが主体となって執り行われていたので、葬儀の流れを知らなくとも葬儀は挙げられました。
しかし、社会構造の変化により、葬儀も家族・親族中心に執り行われるようになったことから、葬儀についての知りたいことのトップに挙げられるようになっています。
そこで、葬儀の一般的な流れを以下の4つの区切り、ここではまず(1)の「死亡直後の対応」について説明します。
日本人の死亡場所は、2017年の人口動態調査によると、病院死74.8%、自宅死13.0%、高齢者施設死10.0%となっています。
病院死が82.4%とピークだった2005年と比較すると、病院死が7.6%減少、自宅死が1.0%の微増、高齢者施設死が7.2%増加しています。
病院死が減少を続けていますが、それでも約4分の3を占めており、以下では、病院で亡くなった場合の一般的な流れについて説明します。
末期の水
人が亡くなると、まず、点滴などの器具が看護師によって取り外されます。
次に、湯のみ茶碗に入った水を綿棒などに含ませ、故人の唇を湿らせます。綿棒ではなく、割り箸の先に脱脂綿を巻きつけ、それを白い布でくるんだものや、新しい筆などを使うこともあります。
これらを、「末期の水」、あるいは「死に水」をとる、と言います。臨終に立ち会った人全員が順番に行います。
元来は、「この水で生き返ってほしい」とか、「死後の世界で乾きに苦しまないように」という願いを込めて行われた習慣でした。
それが現代では死亡直後、死者となった人に、その事実を確認し、別れを告げるものとして象徴的に行われるようになりました。
しかし、最近では行わない病院も増えてきているようです。
死後の処置
清拭(エンゼルケア)
末期の水をとった後は、「死後の処置」を行います。「清拭(せいしき)」とか「エンゼルケア」とも呼ばれています。
看護師などがアルコールを含ませたガーゼなどで全身を拭き、血液や体液が出てこないように口、耳、鼻、肛門などの穴を、脱脂綿を詰めてふさぎます。傷がある場合は、傷口を包帯で処置します。
それから、死化粧(しにげしょう)をします。男性はひげそり、女性には薄化粧を施します。
その後、衣服を着替えます。故人が生前好きだった衣服を用意すれば、看護師が着替えさせてくれます。
これらの死後の処置にかかる時間は、1時間程度です。
死後の処置は、看護師、もしくは病院に出入りしている葬儀会社が行ってくれますが、家族が故人にしてあげられる最後のお世話になりますので、手伝いたい場合には申し出てもかまいません。
家族が手伝うことにより、大切な人を失った喪失感を和らげられることができると言われています。
エンバーミング
エンゼルケアには、死者の尊厳を守る目的のほかに、感染症の予防という目的もあります。
感染予防をさらに徹底的に行う方法として、エンバーミングという手法があります。
ご遺体を消毒して、体内の血液と防腐液とを交換し、殺菌、防腐処理をします。それに顔を整え、修復し、化粧を行います。
アメリカでは南北戦争(1861年~65年)を契機に普及し、いまや9割の遺体に施されている技術です。
日本では1988年以降に導入され、施行件数も徐々に増えてきて、2017年現在、年間4万2760体に行われています。
エンバーミングには、次のような効果があります。
1.ご遺体内の病原菌を殺菌し、感染の恐れが無くなりますので、安全にご遺体に触れることができます。
2.顔が整えられて生前の元気だった容貌が復元されます。そのため、長期入院などの場合に、ほほがこけたり、目が落ちくぼんだりしている場合が多くなっていますが、これが修復できるため、遺族は亡くなった人に対して良いイメージをもって別れることが出来ます。
3.腐敗が進行しないので、遺族は慌てて葬儀をする必要はなく、ゆっくり心ゆくまでお別れができます。
こうした効果があるにも関わらず、日本での死亡者数に対するエンバーミング施行率は、3.2%程度です。
エンバーミングの普及がいま一つ進んでいない要因として、エンバーミングを行う施設と技術者(エンバマー)の不足などが挙げられています。
死亡診断書
人の死の判定は、必ず医師が行います。そして、死亡診断書(一般的に、死亡届と一緒の一枚になっています)に医師が記入し、さらに遺族が記入して役所に提出することで死亡者は戸籍から抹消され、故人となります。
エンゼルケアが終わったら、医師から説明があり、死亡診断書が渡される場合が多いです。死亡診断書の作成料金は、病院によって違い、1通5,000円から2万円ほどです。
この死亡診断書は、火葬を行うまでに役所に提出し、役所から火葬許可書を発行してもらうことにより、火葬が可能になります。
この手続きは、葬儀会社が代行してくれることが多いので、死亡診断書は葬儀会社に渡すまでは大切に持っていてください。
霊安室
エンゼルケアが終わると、病院内の霊安室に安置されます。
しかし、霊安室にご遺体を長い間置いておくことはできません。置いておけるのは病院によっても異なりますが、2、3時間から半日程度が多いようです。
病院側も、次の入院患者さんの受入れ準備をしなければならず、亡くなった方を病院以外の場所に移動してもらいたいからです。
エンゼルケアが終わる前に、看護師さんから「葬儀屋さんはお決まりですか」などと尋ねられるはずですが、それは「移動先が決まっていますか」という意味も含まれているのです。
「葬儀屋さんはお決まりですか」と尋ねられて、慌ててしまう遺族も多いです。
その結果、良く考えずに病院に出入りしている葬儀会社を選んだり、インターネットでよく検討にせずに葬儀会社を選んでしまったりして、後で後悔する遺族も少なくありません。
ですから、病院で臨終を迎えた時には、ご遺体をどこに移動して安置するのか、予め決めておくようにしましょう。
事前に葬儀会社が決まっている人は、霊安室に安置している間に葬儀会社に連絡を入れます。人が亡くなるのは昼夜関係ありませんので、葬儀会社には24時間、電話がつながるようになっています。