葬儀の一般的な流れ ~お葬式から骨上げまで~
葬儀について知りたいことの消費者調査では、「葬儀費用」と並び「葬儀の流れ」がトップに挙げられることが多くなっています。
昔は、葬儀は、町内会など地域のコミュニティーが主体となって執り行われていたので、葬儀の流れを知らなくとも葬儀は挙げられました。
しかし、社会構造の変化によって、葬儀も家族・親族中心に執り行われるようになったことにより、知りたいことのトップに挙げられるようになっています。
そこで、葬儀の一般的な流れを以下の4つに分け、ここでは(3)のお葬式から骨上げについて説明します。
お葬式
お葬式は、葬儀式と告別式という2つの儀式が一緒になったものです。
葬儀式 | 亡くなった人の魂をこの世からあの世へと送る宗教的な儀式 |
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告別式 | 故人とかかわりのあった人たちが、故人に別れを告げる儀式 |
かつては、葬儀式が終わると僧侶は一度退場し、休憩の後、僧侶が再入場して告別式を行っていました。
現在は、葬儀・告別式を並行して行うのがほとんどです。
僧侶が棺の前で読経をし、霊をなぐさめているのが葬儀、その後ろで会葬者が遺族に挨拶し、焼香するのが告別式の部分です。
開式時間
お葬式は、昔はお昼の12時や13時から始まることが多かったのが、近年は午前10時~11時が多くなっています。
早い時間に始まれば、お葬式、火葬、その後の会食等も早く終わり、親族や会葬者が早く帰途につけるからです。
祭壇
祭壇は、かつては白木の輿をかたどった宮型の白木祭壇が多かったのですが、最近は花祭壇が多くなっています。
使われる花は、昔は白菊が定番でしたが、最近は種類も色も多様になっています。
遺影写真
かつては、仏教の葬儀では、本尊と位牌が中心に置かれていました。
それが、遺影写真が登場すると、遺影写真が中心になりました。
遺影写真は、故人の過去の写真から適当なものを選んで拡大して置かれるのが一般的ですが、最近は、遺影用としてあらかじめ写真を撮る人も増えてきています。
お別れの儀
お葬式が閉式すると、棺の蓋を開けて最後のお別れをします。
以前は、故人と対面するのは遺族やごく親しい人だけでしたが、最近は一般参列者も対面することが多くなっています。
別れ花
祭壇や供花の茎の部分をあらかじめ切って除いた花で、遺体の周りを飾ります。これを「別れ花」と言います。
副葬品
故人の愛用品や思い出の品を棺に入れます。これを「副葬品」と言います。
ただし、最近は100%近くが火葬なので、眼鏡や指輪などの燃えないもの、厚い本などの燃えにくいものは入れられません。
メッセージカードや折り鶴
別れ花や副葬品のほかに、最近は、会葬者が一人ひとり故人へのメッセージを書いたカードや折り鶴を棺の中に入れるケースも増えてきています。
釘打ち
お別れがすんだら、棺にふたをします。
故人の姿を見るのはこれが最後になるので、なるべく時間をとって、存分にお別れするようにします。
棺にふたをしたら、かつては、遺族が小石を使って一人ずつ「釘打ち」の儀式を行いました。死霊が外に出ないようにとか、石には呪力があり死者を悪霊から守るためと言われていました。また、コツコツと音を立てて釘を打つことで、「これでお別れです」と自らに言い聞かせるとか、死者が生き返ることを断念するという意味もあったようです。
しかし、時代に変化とともに、釘を打つことを嫌って、最近ではほとんどおこなわれなくなりました。
出棺
棺のふたを閉めると、近親者や友人などの男性6人の手で、棺を式場から霊柩車まで運びます。
出棺前の挨拶
棺を霊柩車に乗せた後、喪主あるいは遺族代表が会葬者にお礼の挨拶をします。
喪主が挨拶をしている間は、喪主の代理が位牌を持ち、それに次ぐ遺族が遺影を持って、遺族全員が会葬者に向かって並びます。
挨拶が終わったら、遺族は深く一礼します。
火葬場に向かう
喪主が挨拶した後、火葬場に向かう車に分乗します。
遺族、親族とごく親しい人たちが行くのが一般的で、残った人は霊柩車を見送ります。
霊柩車を先頭に、位牌を持った喪主、遺影を持った遺族の乗った車が続き、その後に遺族や親族が乗ったマイクロバスなどが連なって行きます。
霊柩車
霊柩車は、昔は宮型霊柩車が主流でした。
昔葬列が行われていた時代に棺を運ぶのに使われた輿をかたどったものです。
しかし、お葬式と一目で分かるような目立つ車は、好まれなくなり、それに代わって、スマートなデザインの洋型霊柩車が登場しました。
1989年の昭和天皇の葬儀でも洋型霊柩車が使われ、今は洋型霊柩車の方が多くなっています。
火葬
納めの式
火葬場に着いたら、火葬許可書を提出し、棺を火葬炉の前に安置します。
火葬炉の前には小さな机があるので、持ってきた位牌と遺影を飾り、「納めの式」として読経と焼香を行うことがあります。
また、ここで棺の窓を開けて、故人と最後のお別れをすることもあります。
火葬
火葬場は、地方では各自治体が運営している場合がほとんどですが、東京だけは民営が多くなっています。火葬料も、公営では無料から2万円程度になっていますが、民営では4万円以上します。
火葬にかかる時間は、施設によっても違いますが、通常は1時間~1時間半程度です。東京の民営火葬場では、1時間以内で終わるケースもあります。
火葬している間遺族は控え室で待機し、火葬時間や時間帯によって、食事あるいは茶菓で同行者をもてなします。どちらも葬儀社のスタッフが手配しますので、遺族の方は、昔のように飲食物を持ち込む必要はありません。
火葬中は、皆さんで故人のお話をしたり、お清めとしてお酒を飲んだりして過ごします。
骨上げ
骨上げ
火葬が終了すると、火葬場から「骨上げ」の案内があります。
「骨上げ」とは、「収骨」「拾骨」「骨拾い」ともいい、火葬がすんだお骨を骨壷に納めることを言います。
欧米には、この拾骨の習慣はありません。遺骨にこだわる日本人の習慣です。
火葬炉の前に集合すると、炉が開いてお骨が上がってきます。
火葬場のスタッフの指示の元、1つのお骨を二人一組になって竹や木の箸で挟み、骨壷に納めます。喪主から故人と関係の深い順に行います。
1つのお骨を二人一組になって一緒に箸で挟む風習にはいろいろな説があります。箸で挟むのは、「この世からあの世への橋(箸)渡し」という語呂合わせや、一人で挟んで途中で落とした時は一人の責任になってしまうので、「二人で挟んで、どちらも悪くないようにする心遣い」などです。
全部拾骨方式と一部拾骨方式
骨上げの方式は、地域によって「全部拾骨方式」と「一部拾骨方式」があります。
「全部拾骨方式」は、文字通りお骨を全部骨壺に納める方式。
「一部拾骨方式」は、お骨の一部だけを持って帰り、後のお骨は火葬場で供養する方式です。
拾骨方式の地域的分布を調査した研究によると、関が原を境にして東は全部拾骨方式、西は一部拾骨方式とされています。
骨上げ終了後
骨上げが終わったら、火葬場の係員が骨壷と埋葬許可書を桐の箱に入れて、白布で包んで渡してくれます。
喪主がその箱を抱えて持ち、遺族が位牌と遺影を持って帰ります。
骨葬
葬儀のあとに火葬するのが一般的ですが、その逆に、葬儀に先行して火葬する地域もあります。
東北のほか、埼玉県の県北以北、千葉県の県北以北、群馬、茨城、長野、新潟、静岡の一部、熊本の一部などです。
かつて骨葬地域であっても、仙台のように、東京の影響を受けて葬儀の後に火葬する人が増えている地域もあります。
習俗は変化するものなのです。