葬儀

最近の主流になっている「家族葬」とは?

家族葬

最近の主流になっている「家族葬」とは?

葬儀は、①規模、②形式(仏教式、無宗教式など)、③場所(葬祭ホール、自宅など)、④内容(故人らしさや家族の要望)などから組み立てられます。
「規模」によって分けた葬儀の主な種類には、「一般葬」「家族葬」「直葬(火葬式)」の3つがあり、ここでは特に都市部においては主流になっている「家族葬」について説明します。

1「家族葬」とは?

「家族葬」には、明確な定義はありません。家族葬には「家族」という名称が付いているので、「家族しか呼んではいけないのですか」という質問も多いのですが、家族に限定する必要はありません。
「家族だけ」で行う場合もあれば、「家族と親族」とで行なったり、「家族と親族に、故人と親しかった友人など」も参列して葬儀を執り行ったりする事もあります。
そうした実態からすると、家族葬とは、「家族を中心とした小規模なお葬式」あるいは「家族を中心として、故人と親しかった人だけで行うお葬式」と言えます。
20年ほど前までに行われてきた伝統的で大規模な葬儀では、遺族は顔も名前も知らない参列者に挨拶したり、食事をふるまったりと、おもてなしに徹しなければならず、故人とゆっくりお別れをすることできませんでした。
家族葬が登場してきた背景の一つには、こうした義理やつき合いで行うお葬式に対する生活者の疑問や不満があり、大切な人を見送る時には、もっとゆっくりと納得のいくお別れをしたいという思いや望みがありました。
そうした思いや望みを叶えられるようにしたのが家族葬であり、そうした意味からすると、家族葬とは、「本当にその人のことを見送りたいという人たちで行うお葬式」と言っても良いでしょう。

「家族葬」と「密葬」とは異なる

「家族を中心とした小規模なお葬式」には、以前から「密葬」と呼ばれる葬儀がありました。そのため、「家族葬」という言葉が登場する前は、家族葬のことを「密葬」と呼ぶ人がいましたし、現在でも混同している人がいます。
「家族葬」と「密葬」とは異なります。「密葬」とは本来、後日、一般の参列者を招いて「本葬」を行うことを前提として、その前に近親者だけで行う葬儀のことです。
それに対して家族葬は、それ自体が本葬であり、単独で行われるものです。

2 家族葬の流れ

家族葬の流れは、基本的には通常の一般的な葬儀と同じで、ご逝去→ご遺体の安置→打ち合わせ→納棺→通夜→葬儀・告別式→火葬(注)→初七日→会食、という流れになります。
(注)地域によって、葬儀・告別式の前に火葬をする場合(前火葬)と、葬儀を終えてから火葬する場合(後火葬)があります。 

3 家族葬の「形式」「場所」「内容」

「家族葬」は、個人や遺族と関係のある多くの人たちに参列してもらう一般的な葬儀とは違い、近親者だけで行うことから、従来の形式やしきたり、世間体などにはとらわれない「形式」「場所」「故人らしさ、家族の要望」の葬儀が増えてきています。
「形式」では、例えば、読経や焼香といった宗教儀式のない「無宗教葬(自由葬)」や、親族の日程の都合などから、通夜は行わずに、葬儀・告別式の一日だけでお別れする「一日葬」が増えてきています。
「場所」では、従来は、葬祭ホールで行う人が圧倒的に多かったのが、参列者が少ないことから「自宅」や故人が入居していた「高齢者施設」などで行う遺族も出てきています。
「内容」では、「故人らしさや家族の要望」を取り入れたものが多くなっています。
「故人らしさ」というのは、故人の趣味・趣向や仕事、社会活動などのその人の個性や特徴です。「家族の要望」と言うのは、読んで字のごとく、このように送ってあげたいという送る側の望みです。これらは、葬儀の満足度に関わる重要な要素なので、最近の家族葬ではこれらが重視されるようになっています。
例えば、故人の想い出の品を展示する「想い出コーナー」の展示、故人の子供の頃からの想い出の写真やビデオなどの「想い出ビデオ」の投影、故人が好きだった音楽を生演奏する「音楽葬」、ホテルやレストランで故人が好きだった食事をしながら故人の想い出を語り合う「お別れ会」など、様々な内容やカタチの葬儀が行われるようになってきています。

4 家族葬の費用

家族葬は、通常の一般的な葬式に比べると小規模であることが多いことから、遺族が負担する費用も安く済むと思って家族葬にする人も多くいます。葬儀のポータルサイト(生活者向け葬儀情報サイト)や葬儀社のホームページなどでも、一般的なお葬式より安いと謳っているところも多く見られます。
しかし、家族葬の費用が、一般的なお葬式の費用より安いとは限りません。家族葬も一般葬の費用もあまり変わらないケースも多くあります。
どういうことか、説明します。

葬儀の費用というのは、「葬儀一式費用」(祭壇、棺、式場使用料、火葬料など)、「飲食接待費」(飲食費、返礼品など)、「寺院費用」(お布施など)の3つの費用から成り立っています。
家族葬は一般のお葬式に比べて参列者の人数が少なくなりますので、「飲食接待費」が下がり、その分、葬式費用も安く済みます。
しかし、断らない限り、参列者はお香典を持参します。
そのお香典は、参列者に対する飲食接待費(返礼品、飲食費、香典返し)に充てられます。お香典の金額と飲食接待費は、相殺するのが一般的です。つまり、参列者が増えても遺族が支払う葬儀費用は増えないのです。
家族葬のような小規模なお葬式を行った場合も、お香典の金額と飲食接待費は相殺される関係にあります。
そうしますと、残るのは「葬儀一式費用」と「寺院費用」です。
この2つの費用は、一般的なお葬式と同様に、家族葬であっても必要です。
この2つの費用の葬儀の規模による違いは、昔はお葬式が大規模だったため、無制限に人を呼んだ場合、より大きな式場を借り、それに見合って祭壇も大きくしなければならないことなどから、葬儀費用もアップし、遺族の負担も増加していました。
しかし、お葬式全体が小規模化してきた現在では、参列者の平均人数は64人程度(鎌倉新書2017年調査)になってきています。この程度ですと、参列者数の多い少ないによって、「葬儀一式費用」や「寺院費用」はさほど変わりません。
ですから、「家族葬は一般のお葬式より規模が小さいので費用が安く済む」とは限らないのです。

ただし、家族葬が増え、葬儀会社間の競争が激しくなってきたことから、式場の収容人数などによって「葬儀一式費用」を変える葬儀社も出てきており、複数の葬儀社から見積もりを取って比較検討されることをお勧めします。

5 家族葬のメリット

今まで説明してきたことも含め、家族葬のメリットについてまとめてみます。
参列者は、家族を中心として故人と親しかった人だけに限定するので、以下のようなメリットがあります。

1.精神的・肉体的な負担が少ない

義理や付き合いで参列する人に対する気遣いが無く、精神的・肉体的な負担を軽減することができる。

2.故人と十分なお別れができる

故人と向き合う時間がゆっくりとれるため、親しい人たちで故人との思い出を語り合うなど、十分なお別れができる。そのことにより、遺族も悲しみの現実を受け止めることができる。

3.自由な葬儀ができる

従来の形式やしきたりにはとらわれずに、遺族の想いを優先した自由な「形式」「場所」「内容」の葬儀を行うことができる。

6 家族葬の注意点と対応方法

家族葬には良い点ばかりではなく、注意しなければならない点もいくつかあります。注意点についての対応方法も含めて説明します。

1.葬儀後に「どうして呼んでくれなかったのか」と言われる場合がある

故人と特に親しかった友人などは「お葬式に参列して故人と直接にお別れをしたい」という想いを強く持っていることがあります。
逝去したことも、家族葬で行うこともお知らせしなかったことで、葬儀終了後に亡くなったことを知った人から「なぜ連絡をしてくれなかったのか」と、遺族が非難されることがあります。
こうしたことが起きないようにするためには、以下の①または②のいずれかの対応をした方が良いでしょう。
対応方法① ―参列は辞退することを伝える
一般の葬儀と同じように「訃報」の案内を行い、その際、「故人や家族の意思により、葬儀は身内だけで行う」ことと「故人の意思により参列を辞退する」ことをお伝えします。
香典や供花・弔電を辞退する場合は、その旨もお伝えすると先方にも親切です。
対応方法② ―葬儀後に「挨拶状」などで報告する
「訃報」案内を行わない場合は、葬儀後に「挨拶状」や「死亡通知状」として、葬儀は故人の意思により家族葬で行ったことを、手紙やはがきで報告します

2.自宅に弔問客が訪れる可能性がある

家族葬が終わった後、「挨拶状」「死亡通知状」や「喪中葉書」を受け取った人たちが、「焼香をさせて欲しい」と、自宅に弔問に訪れる場合があります。交友関係が広かった故人などでは、自宅への弔問客が長期間続くということもあります。
葬儀が終わると、家族は年金・保険などの各種手続きや仏壇・お墓などの準備のために多忙になることに加え、弔問客の対応に追われて、心身ともに疲れてしまうことがあります。
対応方法① ―自宅に会葬返礼品を用意しておく
弔問に訪れる人をお断りするのは失礼ですので、急な来客にも対応でいるように、自宅には会葬返礼品を用意しておくようにします。
自宅に弔問客がたくさん訪れて、心身ともに疲れないようにするには、次の2つの対応方法があります。
対応方法② ―家族葬とは別に、後日、「お別れ会」「偲ぶ会」を催す
家族葬は身内を中心とした葬儀ですので、後日、故人の友人や知人を招く「お別れ会」や「偲ぶ会」を催します。最近は、遺族ではなく、故人の友人が主催する「お別れ会」「偲ぶ会」を行うケースも出てきています。
対応方法③ ―家族葬ではなく一般のお葬式にする
葬儀後、自宅への弔問客が多くなることが予想される場合は、家族葬ではなく一般のお葬式にする。

3.葬儀後に香典を渡される場合がある

家族葬を行う前に、参列や香典・供花・弔電を辞退する案内をしたり、葬儀後に「死亡通知状」で報告しても、「以前、香典をいただいたので」と、香典を持参してきたり、送られてくる場合があります。
対応方法① ―「香典返し」を行う
従来からお付き合いに対する返礼であり、故人へのお気持ちなので、お断りせずに、後日、香典返しを行うようにします。

ABOUT ME
桑原 侑希
桑原 侑希 大手葬儀社にて、10年以上葬儀業に従事し約2000件の葬儀を行ってきました。葬儀のことは勿論、ご葬儀までの終活の相談や、葬儀が終わった後のご供養方法、各種手続きについての相談を受ける内に、その道のエキスパートに。皆さんの葬儀・終活にまつわる「なぜ?」にお答えします。
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