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お焼香の作法は?
基本のマナーや順番、種類や宗派ごとの回数も紹介

お焼香の作法は? 基本のマナーや順番、種類や宗派ごとの回数も紹介

仏教葬では、僧侶によるお読経に合わせて、お焼香をあげます。このお焼香の作法に戸惑われる方は多いのではないでしょうか。
今回は、基本的なマナーだけでなく、お焼香の順番、仏教の宗派ごとに異なるお焼香の作法に加え、葬儀を行う場所によって異なるお焼香のスタイルも併せて紹介します。
お焼香の順番をすぐに知りたい方は「お焼香の順番は、故人との関係や参列者の立場で決まる」をご覧ください。
お焼香の宗派ごとの回数をすぐに知りたい方は「お焼香の回数は、7つの宗派それぞれで異なる」をご覧ください。
葬儀を行う場所によって異なるお焼香のスタイルをすぐに知りたい方は「お焼香には、立礼・座礼・回し焼香の3つのスタイルがある」をご覧ください。

お焼香の由来は、仏教発祥の地と深い関係が

お焼香は、仏様を敬い、故人を偲ぶためにお香を焚いて拝むことです。
お焼香が仏教において特別な存在となったのは、仏教の発祥の地と深く関係しています。

お焼香の役割は匂い消しから、不浄のお祓いへ

仏教の発祥の地、インドは蒸し暑い熱帯気候であり、香木の産地でもあったので、古来よりお香は匂い消しとして用いられていました。
熱帯気候では遺体の痛みが早いため、葬儀でも匂い消しとしてお香が焚かれるようになりました。
このお焼香の役割が、いつしか不浄を祓うという意味を持ち、仏教の供養の1つとして、重要な役割を担うようになったのです。
日本では、仏教の伝来とともに、葬儀でお焼香が行われるようになりました。

お焼香の香りが故人への供養に

お焼香が行われるようになった、もう1つの理由は、仏教の教えにあるとされています。
仏教の経典「倶舎論(くしゃろん)」の中で、次の内容が記されています。
「死後の人間が食べるは匂いだけで、善行を行った死者は良い香りを食べる」
このことを食香と呼び、故人の食事として、良い香りのするお香を焚くことが、故人の供養として定着したとされています。

お焼香で押さえておきたい基本的な5つの流れ

お焼香は、線香で行う場合と、粉末状の抹香で行う場合の2種類があります。
線香で行うお焼香は、お仏壇やお墓にお参りする場合に多く行われます。一方、抹香で行うお焼香は、一般的に葬儀で行われます。
葬儀で行う抹香のお焼香は、仏教の宗派ごとに作法が異なりますが、基本的な流れは同じです。

1自分の順番が来たら席を立ち、焼香台の前まで移動する。
2遺族に一礼し、焼香台にさらに一歩近づき、遺影に向かって一礼する。
3右手の親指、人差し指、中指の3本の指先で香をつまむ。
4宗派ごとに定められたしきたりに合わせた焼香を行い、遺影に向かって合掌して一礼する。
5遺族に一礼し、自分の席へ戻る。

この基本的な流れの中でも、ポイントとなる3つについて解説します。

お焼香の順番は喪主から

お焼香は故人との関係が深い人から順に行うため、最初は喪主やその家族が焼香を行います。
席に着く順番は、故人との関係で決まるため、喪主がお焼香を行った後は、席順に従って行われます。

自分の順番が来たら焼香台へ向かう

前の順番の人が着席し、自分の順番になったら席を立ちます。
焼香台の手前まで移動して、遺族へ一礼します。
次に祭壇の方を向き、焼香台の前へ一歩進み、遺影に向かって一礼します。
席を立つタイミングは、葬儀社のスタッフが教えてくれるので、慌てることはありません。

お焼香の回数は、参列者の人数が多い場合、1回になることも

お焼香の回数は、1回から3回と宗派ごとに異なります。
なお、参列者が多い場合は、時間短縮のため宗派にかかわらず、1回で済ませることもあります。
その場合、葬儀社のスタッフが事前にアナウンスしますが、確認できなかった方は、自身よりも前にお焼香を行う方の回数から判断しましょう。

お焼香の順番は、故人との関係や参列者の立場で決まる

お焼香の順番は、故人と関係が近い方から行います。
一般的には、喪主、故人の家族、親族に続いて、故人の友人やご近所の方や会社関係の方がお焼香を行います。
故人によっては、参列する方の中に、地域の代表者や公職関係者、会社・団体の代表の方などがいる場合があります。そうした方がいると、お焼香の順番を入れ替えることもあります。
このように、お焼香の順番は、故人との関係や、参列者の立場によって変わってきます。

会社や団体を代表してお焼香を行う場合は親族の後に

葬儀によっては、故人がお世話になった会社や団体の方が多く参列する場合があります。
その場合、会社や団体の代表が、お焼香を行うことがあります。会社や団の方すべてがお焼香を行うと時間がかかってしまうためです。
会社や団体の代表がお焼香をする場合、順番は家族や親族による個人焼香が行われた後になることが一般的です。
代表の方のお焼香が終わった後に、友人やご近所の方などのお焼香が行われます。

公職関係者のご焼香の順番は、葬儀社と相談を

国会や地方自治体の議員や町内会の会長など、公職関係者が参列する場合は、葬儀の来賓としてお焼香を行ってもらうことがあります。
どなたを来賓としてお焼香を行ってもらうのか、お焼香の順番をどうするか、最終的には喪主が決めることになりますが、角が立つことがないように、葬儀社に相談して決めることをお勧めします。

お焼香の順番でもめないための、止め焼香とは

お焼香の順番でもめることがないように、西日本の一部の地方では、止め焼香というスタイルで行うことがあります。
止め焼香とは、親族が最後にお焼香を行い、お焼香が順不同であることを参列者へ伝える方法です。
お焼香を最後に行う親族は、故人の兄弟姉妹や、喪主の家族から選びます。

お焼香の回数は、7つの宗派それぞれで異なる

主な宗派のお焼香の回数は、次の通りです。

天台宗1回もしくは3回(どちらでもよい)
真言宗3回
浄土宗何回でもよい
浄土真宗
本願寺派(西)
1回(額に押し頂かない)
浄土真宗
大谷派(東)
2回(額に押し頂かない)
臨済宗1回
曹洞宗2回(1回目は額に押し頂き、2回目は頂かない)
日蓮宗1回もしくは3回
日蓮正宗3回

宗派ごとに異なる理由

葬儀で行うお焼香は、抹香を香炉にくべる回数は何回なのか、額に押しいただくのか、といった作法は宗派によってことなるのはなぜでしょうか。
その理由は、抹香を高炉にくべる回数によって、込められた意味が異なるからです。

お焼香の回数が1回の場合

お焼香の回数が1回なのは、仏教において、死を「一に帰る」と考えていることを表しているからです。

お焼香の回数が2回の場合

1回目は主香といい、故人を悼んで、2回目は従香といい、主香が消えないようにお焼香を行うからです

お焼香の回数が3回の場合

お焼香の回数が3回なのは、仏教の教えにある、三業、三毒などを清めるという説や、三宝に香を捧げるという説などの由来からきています。

葬儀の規模が大きく、参列者が多い場合には1回の場合も

参列者が多い場合、お焼香の回数が1回に抑える場合があります。斎場・葬儀場の閉館時間が決まっているため、葬儀をスムーズに進行させる必要があるからです。
お焼香の回数を1回に抑えるかどうか、葬儀社のスタッフが葬儀の規模から判断してくれるので、確認しましょう。
また、お焼香の回数は、菩提寺の考えや、葬儀を行う地域によって異なることがあるます。葬儀の事情に詳しい親族へ事前に確認しておくことをお勧めします。

お焼香には、立礼・座礼・回し焼香の3つのスタイルがある

葬儀で行われるお焼香は、大きく3つのスタイルがあり、葬儀を行う場所に合わせて選ばれます。
立礼焼香は斎場・葬儀場で行われる葬儀、座礼焼香は自宅や寺院で行われる葬儀、回し焼香は葬儀の会場が狭くて身動きがとりにくい場合や、参列者が多い葬儀で行われます。
まずは、立礼焼香のマナーや手順を紹介します。

立礼焼香

立礼焼香は、斎場・葬儀場で行われる一般的なスタイルのお焼香です。
手順は、まず焼香台の手前で止まり、遺族に一礼します。
その後、身を正して遺影に合掌して一礼し、焼香台へと進んで、お焼香を行います。
最後に遺族へ一礼して席に戻ります。

座礼焼香

畳敷きの和室などがある自宅や寺院の葬儀では、座礼焼香が行われます。
手順は、立礼焼香と同じですが、まっすぐ立ち上がらず、腰を落としたまま膝を使って移動します。(このときの移動法を「膝行・膝退(しっこう・しったい)」と言います。)
親指だけ立てて、他の指を握り、両腕を身体の両脇よりも少し前に置き、体を持ち上げるようにしながら膝を前に出して移動します。
お焼香をする時は正座で行います。

回し焼香

座ったまま、お焼香をあげる箱、焼香炉を隣の人に順番に渡しながらお焼香を行います。
手順は、隣の人から回ってきた焼香炉を軽く会釈して受け取り、畳などの床に座っている場合は、床に置いて立礼焼香と同じ手順でお焼香を行います。
椅子席の場合は、自分の膝の上に焼香炉を乗せてお焼香を行います。
お焼香が終わったら、隣の方に焼香炉を回します。

お焼香で迷いやすい3つのポイントと対応

お焼香には、流れやしきたりのほかにも、様々なマナーが存在します。
お焼香で皆さんが迷いやすい主なポイントを3つ挙げ、それぞれの対応についても紹介します。

手袋をしたままお焼香をしてもマナー違反ではない

手袋をしたままお焼香を行うことに違和感を覚える方は少なくありません。
皇室の公務として、慰霊の法要に参列された佳子さまが、白い手袋をしたままお焼香をする姿に、賛否の意見が上がりました。
お焼香には、宗派ごとにしきたりはありますが、今回の法要を取り仕切った天台宗の関係者は、「わしづかみしてまき散らすなど、よほどのことでない限り、してはいけない、というものはありません」と回答しています。
手袋をしたままお焼香をするのは気になる方は、はずしたほうがよいでしょう。

お焼香の時、数珠の長さによって持ち方を変える

数珠は、真言や陀羅尼などを唱えるときに、何度唱えたか数えるために使うものです。
珠の数が108個あるので、108の煩悩を破るともいわれています。珠の数が54個の数珠を半ぐり、27個の数珠を四半ぐりなどともいいます。
珠が多く、長い数珠を持つときは二重にして、両手を合わせた親指と人差し指の間にかけます。また、玉の数が少なく、短い数珠を持つ場合は、左手の親指と人差し指の間にかけます。

お焼香の時に、バックやかばんは専用の台に置く

お焼香の際、式場に席があれば、自席に置いてお焼香をします。しかし、参列者の人数が多い葬儀では、列に並んでお焼香を行います。
この場合、お焼香の台の手前に設置されている、バックやかばんを置くための一段低い台に乗せて、お焼香をしましょう。台に置けないような荷物がある場合は、葬儀社のスタッフがお焼香の間は預かってくれるので、声をかけましょう。

お焼香には、一般的なマナーや、宗派ごとのしきたりがありますが、考え方は人それぞれです。
参列者の宗派に則ってお焼香を行う方もいれば、故人の宗派に則ってお焼香を行うことが、故人を偲ぶ上で大切だと考える方もいます。
いずれにしても、故人を悼むために、心をこめてお焼香を行うことが、一番の供養になるのではないでしょうか。

ABOUT ME
桑原 侑希
桑原 侑希 大手葬儀社にて、10年以上葬儀業に従事し約2000件の葬儀を行ってきました。葬儀のことは勿論、ご葬儀までの終活の相談や、葬儀が終わった後のご供養方法、各種手続きについての相談を受ける内に、その道のエキスパートに。皆さんの葬儀・終活にまつわる「なぜ?」にお答えします。
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