葬儀

重要性増す「安置場所」の種類と特徴

亡くなって葬儀を迎えるまでの安置先は?

日本には、「死後24時間以内は火葬をしてはいけない」という法律(墓地・埋葬法)があります。死亡後、24時間以内は蘇生する可能性があるため、24時間以上、ご遺体を安置しておくことが義務付けられているのです。
日本人の死亡場所は、病院が約8割(厚生労働省調査)を占めており、病院の霊安室に安置しておける時間は一般的に数時間であるため、葬儀や火葬を行うまで安置しておく場所が必要になります。
ここでは、安置場所の種類・特徴や費用、注意点などについて説明します。

重要性増す安置場所

現在の日本では、以下のような理由から安置場所の必要性が増してきています。

自宅安置が難しくなってきた

ご遺体を自宅で安置することが住宅事情や、亡くなったことを近燐に知られたくないなどの理由で難しくなってきています。

火葬するまでの待機期間が長期化

亡くなってから火葬するまでの期間は、一般的には2~3日ですが、死亡者数が年々増えてきている一方、火葬場・火葬炉を思うように増やせないことなどから、火葬場の待ち日数が長期化してきています。
特に都市部では、年末年始などは1週間から10日間くらい待たされるケースも出てきています。

「直葬」が増えてきた

葬送方法の一つとして儀式を行わない「直葬」も増えてきており、首都圏では直葬比率が3割を超える葬儀会社も増えています。
「直葬」は儀式を行わないことから、葬祭ホールなどは必要とせず、安置場所さえあればいい葬送方法です。

こうした要因から、都市部では民間の安置専用施設や、ホテルのような一室に安置し、家族と一緒の時間を過ごすことができる「遺体ホテル」や「安置ホテル」と呼ばれる安置施設も出来てきています。

安置場所の種類・特徴

主な安置場所には、次のようなところがあります。
1.自宅(戸建て)
2.自宅(アパート・マンションなどの集合住宅)
3.葬儀会社の安置所
4.安置専用施設
5.火葬場
それぞれにメリット、デメリットがありますので、以下で説明します。

自宅(戸建て)

●メリット
1.故人や家族の希望を叶えられる
自宅は、故人にとっても遺族にとっても慣れ親しんだ場所であり、最後の時間を家族でゆっくり過ごし、お別れができる場所です。
病院や高齢者施設で息を引き取った場合、故人の生前の希望や、遺族の想いから、故人を一度自宅に戻してあげたいという方は多く、その希望を叶えられる場所です。

2.費用が安く済む
自宅であれば施設費用料や付き添い費用はかかりませんので、費用が比較的安く済みます。

●デメリット
1.近所に知られてしまう恐れがある
葬儀は、身内を中心とした家族葬や直葬で考えている場合、亡くなったことを近所に知られてしまうのは好ましくないでしょう。
ご遺体を自宅に搬入・搬出すると、近所に知られてしまう恐れがあります。

2.弔問客が訪れる可能性がある
ご遺体を自宅で安置して、葬儀は葬祭ホールなどで行う場合でも、葬儀までの間、自宅
に弔問客が訪れる可能性があります。特に交友関係が多い方だと、多くの人が訪れるかもしれません。
そうなってしまうと、遺族には精神的・肉体的な負担になることがあります。

自宅(マンション・アパートなどの集合住宅)

●メリット
1.故人や家族の希望を実現できる
「戸建て」の項目で述べたメリットと同じです。

●デメリット
1.安置スペースに余裕がない
自宅で安置する場合には、故人を寝かせるのに布団を敷き、枕経を行うスペースが必要になります。
アパート・マンションは戸建てに比べて狭いことが多く、安置場所のスペースを十分に確保できないということもありえます。
ただし、畳一畳程度のスペースがあれば安置することは可能です。

2.安置する部屋まで搬入するのが難しい
安置する部屋まで運ぶのに、廊下や通路が狭い場合があります。しかし、そうした場合でも、抱きかかえるなどして搬入する葬儀社が一般的です。
エレベーターがない集合住宅の場合もありますが、階段を使って運ぶ葬儀社が一般的です。
廊下や通路が狭く、エレベーターがなくても、玄関から柩を出せるだけのスペースがあれば、安置はできます。

3.管理会社・管理人への報告が必要
集合住宅の場合、管理組合規約に特段の規定がない限り、安置することは可能です。ただし、エレベーターにストレッチャーを差し込めるようにお願いしたり、故人を載せる車両の駐車場を確保してもらったり、管理会社・管理人に協力を求めなければならないケースがあります。
また、建物の共有部分にキズがつかないようにし、搬入する時間などにも配慮する必要があります。
事前に管理会社・管理人に連絡をとり、自宅に安置することを伝え、気を付けるべき点について聞くようにした方が無難です。

葬儀会社の安置所

ほとんどの葬儀会社は、自社の斎場や事務所内などに安置施設を持っています。また、最近では、自宅での安置と同じようにゆっくり過ごせるよう、宿泊型の安置所も出てきています。

●メリット
1.葬儀会社に全て任せられる
安置の準備やご遺体の管理をすべて葬儀会社に任せられるので、遺族の精神的・物理的負担が少なくて済みます。

2.ご遺体の保護がしやすい
安置場所と葬儀場所が同じであれば、ご遺体を搬送する必要がなく、故人の身体の傷みを抑えられます。
また、保管設備が整っていますので、ご遺体の保護をしやすいです。

3.24時間いつでも安置可能
24時間いつでも安置できるところがほとんどです。

●デメリット
1.有料である
民間会社のサービスなので安置した日数分の料金がかかります。
線香を絶やさないための付き添いを依頼した場合などにも、その分の費用がかかります。

2.面会や弔問の時間が決められている
葬儀会社としては、運営費や管理費がかかりますので、面会や弔問の時間が決められており、面会の際に葬儀社の立ち合いが必要な場合もあります。そのため、最後のお別れがゆっくりできないというデメリットがあります。
しかし最近は、家族も一緒にゆっくり過ごせる宿泊型の安置施設を用意している葬儀社もあります。宿泊型であれば、面会の心配はなく、故人とのお別れの時間も大切にできます。

3.安置所の質に差がある
葬儀会社の安置所は、安置場所・方法、安置スペース、トイレ、パントリー、面会時間、
綺麗さ、静かさなどが様々で、安置所の質に大きな差があります。
葬儀会社の安置所を利用する場合は、葬儀の事前相談などの時に、故人をご安置するのに相応しい場所かどうかをチェックするようにしましょう。

安置専用施設

特に都市部では、ご遺体の安置や面会を中心にした安置専用施設が増えてきています。

●メリット
1.24時間営業
24時間営業している施設が多く、面会も24時間可能な施設があります。
最近では、ホテルのような一室にご遺体を安置し、家族が一緒に過ごすことができる「遺体ホテル」や「安置ホテル」と呼ばれる施設も出来てきています。

2.葬儀社を決めるまでに時間的余裕がある
安置所は、葬儀や火葬を行う前に、一時的に安置しておく施設ですが、葬儀社をどこにするか決まっていない場合は、どこにするか検討する時間的余裕があります。

3.一時的な安置に便利
葬儀を行う場所が遠方のため一時的に安置したい、火葬までの待機日数が長いので、その間安置しておきたいなどの時に、便利な施設です。

●デメリット
1.安置費用がかかる
安置する日数分だけ費用がかかります。

2.面会に制限がある
面会一回当たりの時間が決まっている施設や、面会するのに費用がかかる施設、面会に
葬儀社の立ち合いが必要な施設などがあります。
中には面会できない施設もありますから、確認するようにしましょう。

3.長期間安置には適さない
専用の冷蔵設備を備えていない施設も多くあり、備えていない場合は、自宅の場合と同じようにドライアイスの対応となります。環境的には自宅と変わらないため、長期間の安置にはあまり適していません。

4.葬儀社を別途、手配する必要がある
葬儀社が決まっていない場合、葬儀や火葬をおこなうため別途、葬儀社を手配する必要があります。
ただし、葬儀や火葬手配まで行う事業者もあります。
また、「遺体ホテル」や「安置ホテル」では、身内だけのお通夜をし、簡単なお別れの儀式をできるところもあります。

火葬場

火葬場の中に安置室を設置しているところもあります。

●メリット
1.安置料が安い
東京23区以外の火葬場は、ほとんどが公営となっており、安置料は安く設定されています。

2.移動時間が少ない
葬儀や火葬を行う際に、移動距離が短いので寝台車を利用せずに済む場合もあり、使用料がかかりません。また、移動時間が短いので、体の痛みが進むこともあまり心配ありません。

●デメリット
1.安置室がない火葬場も多い
ご遺体を預かると24時間管理責任が生じます。公営の施設はこれを嫌がり、安置室を設けていないところも多くなっています。
また、安置室があっても、特に死亡人口が増加している都市部では、受け入れられる数が少なくなっています。

2.安置環境が良くない
「安置施設を設けているだけまし」といった発想から、まるで倉庫のようなところにご遺体を置いているケースもあります。
そうしたところでは、遺族の同席や面会を認めないというのが一般的です。

安置にかかる費用

安置所を利用する時は、以下のような費用がかかります。
1.ご遺体搬送料(死亡場所から安置所、安置所から火葬場など)
2.安置所利用料
3.ご遺体保存費用(ドライアイスなど)
4.付添い費用(告別式前夜など)

以上の費用は、安置場所によって異なりますので説明します。
※下記はあくまで参考料金で、料金は依頼する葬儀社や安置専用施設によって異なりますので、確認してください。

ご遺体搬送料

安置場所によっては異ならず、搬送する距離によって異なります。
10km当たり、20,000円程度が一般的です。

安置所利用料

「自宅」は、かかりません。
「葬儀会社の安置所」は、1日当たり5,000円~30,000円程度です。
「安置専用施設」は、1日当たり10,000円~20,000円程度です。

ご遺体保存費用

「自宅」は、1日当たり5,000円~10,000円程度です。
「葬儀会社の安置所」は、1日当たり10,000円から20,000円程度です。
「安置専用施設」は、1日当たり5,000円から15,000円程度です。

付添い費用

「自宅」は、かかりません。
「葬儀会社の安置所」は、30,000円~50,000円程度です。
「安置専用施設」は、5,000円~30,000円程度です。

安置における注意点

ご遺体を安置するに際しては、特に注意しなければならない点があります。

ご遺体保存

ご遺体にダメージを与えないためや腐敗を防止するために、ご遺体を保存する必要があります。特に注意を要するのは、自宅に安置する場合です。
必ずドライアイスで冷やして、葬儀や火葬まで状態を保つことが必要です。
また、夏はエアコンの室温を低く調整し、冬は暖房をつけないようにして、遺体の腐敗を防止する必要があります。

宗教・地域により安置方法が異なる

ご遺体安置の方法は、宗教・宗派や地域によっても異なります。ご遺体の安置は、故人の宗教・宗派に合わせて行うことが、故人に対する供養となります。
ご遺体の安置方法は、宗教者や親族、地域の方に確認するようにしましょう。

事前に検討しておく

病院で亡くなった場合、霊安室から短時間で移動を求められるのが一般的ですので、安置場所については、事前に検討しておいた方が無難です。

ABOUT ME
桑原 侑希
桑原 侑希 大手葬儀社にて、10年以上葬儀業に従事し約2000件の葬儀を行ってきました。葬儀のことは勿論、ご葬儀までの終活の相談や、葬儀が終わった後のご供養方法、各種手続きについての相談を受ける内に、その道のエキスパートに。皆さんの葬儀・終活にまつわる「なぜ?」にお答えします。
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