良い葬儀社の選び方(1)
~「時間がないときの選び方」~
葬儀を執り行うに当たって、最初に決めなければならないのは葬儀会社です。
しかし、人生で葬儀を執り行うのはそうあることではないことから、知識も経験も少なく、いざとなると故人・遺族の希望にあった良い葬儀会社をどのように探し、選んだらよいのか分からない人が多いのが現実です。
ご遺族は突然の訃報に動揺していることも手伝い、葬儀会社の良し悪しの判断もつかぬまま選んでしまい、後で後悔したといったケースは多くあります。
葬儀を行った経験のある遺族の48%が後悔したと回答している調査データもあります。
それだけに、良い葬儀社を選べるかどうかは、後悔のない葬儀を行う上でとても重要なことなのです。
そこで、良い葬儀社の選び方について説明します。
葬儀社の選び方を以下に分けて、ここでは1.ご逝去前後の「時間がない時の選び方」について解説します。
1.ご逝去前後の「時間がない時の選び方」
2.ご逝去1週間以上前の「時間がある時の選び方」
1.病院からの搬送
近年では、病院で亡くなる方が8割近くになっています。
病院ではご遺体を長く置いておくことは出来ず、自宅や安置室のある葬祭会館など、しかるべき安置場所へ搬送しなければなりません。
病院ではご遺体を搬送してくれませんので、搬送する方法は次の2つのケースに分かれます。
葬儀会社は決まっている場合
葬儀会社が決まっている場合は、葬儀会社に連絡して病院に来てもらい、その葬儀会社が所有する安置室のある葬祭会館や自宅などに搬送してもらいます。
葬儀会社は決まっていない場合
葬儀会社が決まっていない場合は、病院と提携している葬儀会社を紹介してもらうことができます。また、病院が提携している葬儀会社を紹介してくることもあります。
その場合、気をつける必要があるのは、その葬儀会社は、安置所までの搬送と安置だけではなく、葬儀までその葬儀会社を勧めてくることが多いことです。
そうした場合でも、搬送・安置だけにして、葬儀までお願いする必要はありません。
ところが、亡くなった直後では遺族は冷静ではないことなどから、葬儀会社に勧められるままに、搬送・安置だけではなく、葬儀までお願いするケースも多くなっています。
その場合は、他の葬儀会社との比較はしていませんので、後になって「葬儀代が高かった」とか、「葬儀の内容が思っていたものではなかった」など、後悔している人も少なくなくありません。
ですから、病院から紹介された葬儀会社には、搬送・安置だけをお願いし、葬儀をお願いする葬儀会社探し・検討は、安置している間に行うようにすることをお勧めします。
2.安置場所
病院から紹介された葬儀会社に搬送・安置だけをお願いする時は、予め安置場所を決めておかなければなりません。
安置場所には、「自宅」「葬儀会社の安置所」「安置専用施設」「火葬場」などがあります。
これらのメリット・デメリットや料金などについては「重要性増す安置場所の種類と特徴」で詳しく説明していますので、そちらをお読みください。
3.ご遺骨をどうするのか
安置場所が決まり、葬儀会社を選ぶ前に考えなければならない重要なことがあります。
それは遺骨をどうするのかということです。
葬儀の前に、なぜ遺骨のことを考えなければならないかというと、まずお墓を持っていない人と、いる人とでは、葬儀の進め方が異なるからです。
お墓を持っていない人の場合
お墓を持っていない人は、葬儀は自由に行えます。
葬儀で戒名を付けてもらったり、お経を読んでもらうお坊さんは、葬儀を依頼する葬儀会社に紹介してもらえます。
お墓を持っていない人の場合、遺骨をどうするかは、葬儀が終わってから考えても大丈夫です。
お墓を持っている人の場合
お墓を持っている人の場合は、大きくは、以下に分けて考える必要があります。
1)お寺と檀家関係を結んで購入したお墓
2)お寺と檀家関係を結ばずに購入したお墓
昔は、ほとんどが1)のパターンでしたが、近年は、特に都市部では、地方から出てきたお墓を持っていない人に幅広くお墓を購入してもらう目的などから、2)のパターンが増えてきています。
お寺ではなく、自治体が運営している公営墓地や、民間企業が運営している民営墓地も2)のパターンに含まれます。
1)お寺と檀家関係を結んで購入したお墓を持っている場合
この場合は、葬儀の流れの決定権は、基本的にお寺(=菩提寺)にあります。
戒名はこの菩提寺につけてもらい、葬儀には菩提寺が来てお経を読むことになります。
葬儀の日程も、菩提寺の都合が最優先されます。中には、葬儀会社まで指定してくる菩提寺もいます。
檀家関係を結んでいるとこのような力関係になりますので、菩提寺に黙って勝手に葬儀を行うと、関係がこじれて後日納骨を拒否されてしまう可能性もあります。
ですから、葬儀となると、まず菩提寺に一報を入れて相談するようにしましょう。
2)お寺と檀家関係をむすばずに購入したお墓を持っている場合
この場合は、お寺の都合は考えずに葬儀を行えます。
戒名を付けたり、お経を読んでもらうお坊さんは、その墓からの紹介でも、依頼した葬儀会社からの紹介でも、どちらでも構いません。
4.葬儀会社の選び方
安置が済んで遺骨をどうするのかが決まったら、良い葬儀会社を探して、選ぶ作業に入ります。
ただ、これからお伝えするのは、時間がない場合の選び方です。
良い葬儀会社を選ぶには、事前に時間と手間をかけないと難しいので、ここではあくまで時間がない場合の時間を短縮した選び方であることを踏まえてお読みください。
時間がない場合は、次の手順で選びます。
1)葬儀会社を探す
まず、インターネットやタウンページなどで、葬儀を行う近くにある葬儀会社を探します。
インターネットで葬儀会社を探す場合は、「地域名+葬儀会社一覧」と検索すると、ホームページを持たないような昔ながらの葬儀会社もひっかかってきます。
そのリストに、社名、所在地、連絡先が載っている場合が多くあります。
2)ホームページを見て数社ピックアップする(時間がある場合)
時間がある場合は、検索して出てきた葬儀会社のホームぺージをみて、見積もりを取り、話を聞く葬儀会社の候補先を数社探します。
ホームページで良さそうな葬儀会社を探すには、以下のような点に着目するとよいでしょう。
葬儀費用の総額が 掲載されている | 葬儀には、葬儀一式費用(葬儀会社に支払い)のほか、接待・飲食費、宗教者への謝礼などの費用がかかります。 葬儀一式費用や葬儀プランの費用だけでなく、葬儀の総額が分かるようにしてあるか確認しましょう。 |
---|---|
葬儀の実例が 掲載されている | これまでの葬儀の実例が豊富に掲載されていると、その葬儀会社が提供するサービスがどのようなものかが分かります。 |
葬儀プラン以外の情報が 豊富に掲載されている | 葬儀プラン以外の情報、例えば、「葬儀の基礎知識」や「その地域特有の葬儀情報」などを多数掲載している葬儀会社は、お客さんに役立つ良い情報を提供しようという視点を持った葬儀会社が多いです。 |
社長やスタッフの顔が 掲載されている | 葬儀会社は、社員は社長一人で、あとは葬儀の依頼があった都度、臨時のスタッフで回したり、外部の派遣会社に丸投げしているところも少なくありません。 ホームぺージに、社長のほかスタッフの顔が載っているだけで安心感があります。 |
会社概要や所在地が 明記されている | 葬儀会社では、ホームページだけは立派というところもあります。 会社概要や所在地を確認できない場合は、実態のないブローカーという可能性もあります。 |
3)見積りを数社に電話で依頼する
次に、ホームページを見て良さそうだと思ったところ2社以上に、電話で見積りを依頼します(ホームページを見ている時間がない場合は、インターネットやタウンページで見つけた葬儀会社でも構いません)。
比較検討するために、必ず2社以上に依頼してください。
出来るなら、最低3社がよいでしょう。
見積ってもらう内容は、「場所」「人数」です。人数は概数でよいです。
日程の希望がある場合は、それも伝えて見積もってもらってください。
返信は、メールまたはファックスで送ってもらいます。
この電話をした段階で、対応が誠実ではないと感じたら、その葬儀会社に見積もりを依頼するのは止めて、別の葬儀会社に依頼してください。
4)見積りを依頼した葬儀会社の説明を聞き、比較検討する
依頼した数社の見積りが手元に揃ったら、葬儀会社に自宅に来てもらって話を聞きます。
自宅が不都合なら、近所の喫茶店やファミリーレストランなどでも構いません。
話を聞くのは、見積もり額が安い順にします。
まず、一番安い葬儀会社(仮にA社とします)から見積もり内容の説明を受けます。
次いで、2番目に安い葬儀会社(仮にB社とします)には、「A社よりB社が高い理由」について説明してもらいます。
その説明が、納得がいくものなら、A社よりB社の方が良いと評価します。
ただし、価格を重視する場合で、A社とB社の内容にはそれほどの差がなければ、B社よりA社の方が良いと評価しても構いません。
比較検討するのが2社の場合は、これで終わりです。
比較検討するのが3社の場合は(3社目を仮にC社とします)、C社には「A社とB社よりもC社の値段が高い理由」を説明してもらいます。
そして、3社の中から一番納得のいく説明をしたところを選んでください。3社の説明、内容にさほどの差がなく、価格を重視するならA社にしても良いでしょう。
参考文献:『子どもに迷惑をかけないお葬式の教科書』赤城啓昭著(扶桑社刊)