葬儀

葬儀後に困らないために【やる事・手続きの全て】

ご葬儀が終わったら

大切な方の最後を看取った家族は、葬儀社の手配・打ち合わせと短期間で目まぐるしい日々を経て、ご葬儀を迎えます。
ご葬儀を終えて喪失感にかられながらも、家族の手でしっかりと送り出してあげられた事にほっと胸をなでおろす思いがしますが、次に気になるのが『葬儀後にやる事』です。
今まさに、以下のような不安を感じている方がいらっしゃるかもしれません。
こんなことでご不安はありませんか?

・会社の忌引休暇中に手続きやご挨拶を済ませたい
(そもそも、手続きやご挨拶の期限って?具体的に何をいつまでに済ませればいいの?)

・両親とは離れて生活していたので、資産管理状況を把握していない。
(どこの金融機関を利用していたの?不動産の権利書や保険証書などの重要書類の保管場所は?

・高齢になった親が亡くなったら、訃報はどこまでの範囲に伝えるべき?
(親族や友人も高齢だし、晩年は施設暮らしで近所づきあいも疎遠になり、葬儀は家族葬で執り行ったのでご近所にもまだ伝えてなくて…)

もし、このようなお悩みがあるなら、この記事をぜひ活用してください。

葬儀後に必要な手続きについて

1.そもそも、忌引休暇中に手続きを終える事は難しい

葬儀後の手続きでは、故人が亡くなった事を確認する書類として『除票の記載がある住民票』や『除籍の記載がある戸籍謄(抄)本』が必要となります。
除票や除籍の記載は死亡届を役所に提出すると手続きが進められるので、家族からの申請は必要ありませんが、役所内での書類作成に時間を要します。
・死亡届を提出した役所に、住民票や本籍がある場合・・・5日~7日が目安
・死亡届を提出した役所とは別のところに、住民票や本籍がある場合・・・10日~14日が目安

「とにかく必要になるらしいから、忌引休暇中にとっておこう」と闇雲に行動すると以下のような失敗をして、何度も役所に通わないといけない事になるので、注意が必要です。
・期間を見誤り、役所でまだ除票や除籍記載のある書類が出来上がっていなかった。
・故人が生れてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本が必要と言われた。
・故人以外の相続人の書類が、必要だった。

慌てて行動する前に、”我が家が行う必要のある、葬儀後の手続き” を整理し、手続き方法と期限・必要書類を確認しながら進めるのが効率的です。

2. 我が家が行う必要のある、葬儀後の手続きは何か?

ネットで「葬儀後手続き 一覧」などと検索したサイトを閲覧すると、葬儀後の手続きが思う以上に数多くあって驚かされます。
しかし、そこに掲載されている手続きを全て行う必要はあるのでしょうか?
例えば、死亡届の提出は葬儀社が代行して提出してくれたり、住民票の世帯主の変更は死亡届の提出後に役所内で自動的に存命の配偶者に切り替わるので、特に世帯主の指定がなければ届出不要という市区町村もあったりします。
また、代表的な以下の手続きも 「我が家はこの手続きを行う必要があるのか?」を見極めて対応する手続きです。

準確定申告 (期限: 4ヶ月以内)

→故人が年金受給者だった場合、平成23年より公的年金等の年収が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下の方の準確定申告は不要となりました。
(ただし、医療費控除や介護保険などの社会保険料控除、地震保険料控除といった所得控除を受ける場合は、準確定申告をすると源泉徴収された税金が戻ってくる場合があります。)

相続税申告 (期限:10ヶ月以内)

→相続税申告は、相続財産が基礎控除額以下である場合には不要です。
平成27年1月1日より相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)となりました。
例えば、相続人が2人の場合の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×2名)=4200万円となります。
もし、故人名義の預貯金や不動産などの相続財産を合計して、4200万円を越えなければ相続税申告は不要という事になります。

相続放棄(期限:3ヶ月 以内)

→相続放棄は、例えば故人に多額な借金があった場合に家庭裁判所に申告して、不動産などのプラスの財産も含めて一切の遺産相続を放棄する手続きです。
相続放棄と混同されがちで、注意が必要な手続きに「遺産放棄」があります。
例として、相続人である長男と次男の間で話し合った結果、親の面倒を見ていた長男が全ての財産を引き継ぐ事で合意した場合に、次男は相続放棄の手続きを家庭裁判所で行う必要はありません。
もし次男が相続放棄を行った後に、実は次男がマイホームを購入時に故人が融資してくれて、故人と次男の共有名義としていた事が発覚した場合、次男には相続権がないので故人の持ち分となっていた名義分を次男名義にする権利がありません。
一旦、長男に名義変更をした上で次男に贈与するなどの対応が必要となり、次男が相続放棄をしなければ支払う必要がなかった贈与税申告が必要になってきます。
遺産放棄は、遺産分割協議書などの書類作成時に次男が長男が遺産を引き継ぐ事に合意した旨の意思を明らかにすれば、手続きを進める事ができます。
相続放棄が受理されると、原則的に撤回や取り消しは出来ません。相続財産の全体状況をしっかりと把握した上で慎重に対応する必要があります。

3.まずは、故人の資産や資産管理状況を把握する事

あなたが自分の身の回りの物(以下、持ち物)を把握出来ているのは、保管場所などの管理ルールが把握できているからではないでしょうか?
「保険証」「通帳」「保険証書」「不動産の権利書」の保管場所は決まっていて、すぐにどこにあるか思い浮かぶはずです。
これが故人などの持ち物だと管理ルールを把握していないので、どこに何があるのか分からずに、実際以上に持ち物があるように思えてきて、一体どこを探せばいいのかと途方にくれるという事に陥る場合があります。

まずは該当機関に申請すれば、支給されるお金がある書類を探しましょう。
書類を見つけたら、記載されている問い合わせ先などに連絡をして、申請方法や期限・申請時に必要な添付書類の確認を行ってください。
・保険証(国民健康保険・後期高齢者医療制度の保険・社会保険(共済組合・健康保険組合・協会けんぽ))
→葬祭費や埋葬料と呼ばれるお金が、支給されます。
・年金証書・年金手帳(年金受給者の場合、年金額改定通知書や年金振込通知書)
→条件に応じて、遺族年金や未支給年金が支給されます。
・生命保険などの保険証書
→条件に応じて、保険金を請求できます。

次に、「預金通帳」です。
財産管理状況を把握できる、一番のツールです。
通帳を見つけたら、銀行のATMにて通帳記帳を行ってください。(キャッシュカードがなくても記帳は出来ます。)
ご逝去時点から1年を目安にさかのぼり、入金や自動引き落としで出金されているものは、何らかの手続きを行う必要があると判断できます。
電気・ガス・水道などの公共料金は、自動引き落とし口座の変更手続きが必要となりますし、新聞などの定期購入している商品の解約手続きなどの、判断・目途を立てる事ができます。
問い合わせ先の電話番号がわからない場合も、引き落とし名目をそのまま検索サイトで調べると、問い合わせ先を辿る事ができます。

その他にも、不動産の権利書や固定資産税の納税通知書・証券証書などの重要書類を探し、資産状況を把握していきます。
しかし、あまりにもこの作業に時間を要するようならば、『遺品整理』を専門業者に依頼するのも一つのやり方です。
遺品整理会社によっては、持ち物に重要書類が紛れ込んでいないか?鞄やタンスの引き出し、服のポケット一つ一つチェックして片付けをサポートしてくれる会社もあります。
多くの会社は、事前相談・見積査定は無料なので 問い合わせ時に相談してみると良いと思います。

葬儀後のあいさつは?事例をご紹介

高齢な親がなくなった場合など、以下の理由により家族のみで葬儀を終えてから訃報を伝えるケースも増えています。
・故人の兄弟も高齢で疎遠になっている。特に遠方に住んでいる親族には、あまり負担をかけたくない。
・友人も高齢になり、年賀状のやり取り程度のお付き合いしかしていないようだ。
・晩年は病院や施設で生活していたので、故人自身のご近所づきあいも疎遠になっていた。
家族としては相手を気遣っての行為だったとしても、「何で知らせてくれなかったんだ!」「非常識ではないか?」など、家族が想定していない事を言われるかもしれません。
そのような事態に陥ったとしてもトラブルと受け止めず、その方の故人への思いの深さ故と受け止めて冷静に対応したいものです。
とはいえ、ご葬儀後のご挨拶は、以下のポイントを踏まえてしっかりと家族の意向を伝えましょう。

1.故人の兄弟など親族関係や、入院中にお見舞いに来てくれたなど頻繁に交流のあった友人の方へのご連絡

ご葬儀を終えてからなるべく早く、7日以内が目安です。
連絡手段は、電話・メール・はがき等があげられますが、電話が一番確実に早くお伝えができるのでお勧めです。
お伝えする内容としては、以下を参考にしてください。
・死亡の通知
→故人の名前と死亡日時・年齢
・葬儀の報告とお詫び
→家族で葬儀を済ませた事とその理由
・故人の思い出
→故人との思い出やお世話になった事へのお礼

文例:
(故人)の長男〇〇でございます。
先日、〇月〇日に(故人)が亡くなりました。
(故人)が生前より希望していたので、葬儀は家族だけで、〇月〇日に行いました。
事前にご連絡を差し上げずに、申し訳ございません。
(故人)の××歳の生涯を振り返ると、〇〇様や多くの方と出会い充実した日々を過ごせて、
幸せな人生を送る事が出来たと思います。
ご家族の皆様にもよろしくお伝えください。
本当にありがとうございました。
失礼いたします。

2.年賀状のやり取りのみなど、疎遠になった方へのご連絡

先様の近況などがわからない場合、家族も落ち着いた四十九日の忌明け頃を目安に、死亡通知のはがきにてお伝えします。

文例:
(故人)儀 〇月〇日××歳にて永眠致しました
なお葬儀と納骨は故人の希望により近親者のみにて相営みました
ここに謹んでお知らせ申し上げますとともに
生前中賜りましたご厚誼に心より御礼申し上げます

3.故人の自宅 ご近所の方へのご連絡

ご近所の方への連絡は、町内会やマンションにて決まりがあるかもしれません。
まずは、自治会の役員の方やマンションの管理組合に相談をしてみましょう。
決まりがない場合でも、隣近所の方は家族の様子から訃報を察しているかもしれません。
特に両親と離れて生活していた場合には、今後 自宅の片付けなどで頻繁に出入りを行います。
ご葬儀を終えてからなるべく早く、7日以内を目安に、訪問にてご挨拶をしておくと丁寧です。

挨拶の例:
隣に住んでいた(故人)の長男〇〇です。
先日(故人)が亡くなりました。
生前にはお世話になりました。ありがとうございます。
葬儀は〇日に済ませました。事前にご連絡を差し上げずに、申し訳ございません。
これから自宅の片付けなどで出入りもありますので、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

葬儀後の弔問対応について

1.そもそも、弔問は受けるべきなのか?

家族としては、葬儀を終えて一息つきながらも葬儀後の手続きで落ち着かない状況かもしれません。
また、わざわざお参りに来てもらう事に気兼ねして、お断りしたほうがいいのかもと気を遣う方もいるかもしれません。
しかし、弔問客からすると故人と向き合ってを悼む、得難い機会です。
できる限りで無理をする必要はありませんが、対応したいものです。

2.弔問客のお迎えの準備や服装は?

事前に弔問の予定を告げてくれる場合もありますが、突然のご訪問という事も考えられます。
急な訪問に備えて、玄関や仏間は片づけておきましょう。
お迎えの際の服装は、喪服に着替える必要はありません。
しかし、派手な色の服や露出の多い服は避け、落ち着いた色合いの服装でお迎えしましょう。

3.お迎えの際の対応

弔問客の中には、家族に気を使って玄関先でお悔やみを述べた後香典を渡して帰ろうとする方もいます。
その場合、「よろしければ、お参りいただけませんか。」などの言葉をかけても失礼ではありません。
一度促して断るようであれば、故人が生前お世話になったことのお礼と、足を運んでくれたことへの感謝を伝えて見送ります。
お参りいただいた弔問客には、お茶と簡単なお茶菓子を出すと丁寧です。
家族も親しくしている方であれば故人との思い出話を、面識のない方であれば故人がどのような機会でお世話になっていたのか伺うと良いでしょう。

葬儀後の香典返しについて

1.お香典返しの意味合いについて

お香典返しには、相手からいただいたお香典(お気持ち)に対するお礼の意味合いの他に、弔事を滞りなく終えたことを伝える意味合いもあります。
そのため、四十九日を過ぎた忌明けに、その旨をしたためた挨拶状を添えてお届けします。
最近では、会葬御礼のお品物と一緒に2,000円~3,000円のお香典返しをお渡ししてご挨拶する場合もあります。

2.お香典返しの金額目安は?

お香典返しの金額の目安は、いただいたお香典額の半額程が一般的です。
ご葬儀で当日お香典返しをお渡しした方でも、高額なお香典をいただいた方がいれば四十九日の忌明けに改めてご挨拶を行うと丁寧です。

3.葬儀後に受け取ったお香典へのお返しについて

お葬式を終えてから自宅にお参りに来た弔問客からお香典受け取ったり、郵送でお香典を届けてくれる方もいます。
そのような方に対しても、 四十九日の忌明けに改めてご挨拶を行うと丁寧です。
後日お香典返しがお届けできるように、弔問客の方にはお名前や電話番号・お届け先の住所をお伺いしておくとよいでしょう。
最近では、ご葬儀の際に用意した会葬御礼のお品物とお香典返しをお渡しして、ご挨拶を行う事もあります。

葬儀後にやる事・手続きについてのまとめ

最近は家族葬や直葬など家族主体で故人を送るご葬儀が増えており、 葬儀経験のある方から葬儀後にやるべき事のアドバイスを受ける機会が少なくなりました。
葬儀後にやるべき事も家族で調べながら進める必要があり、「あれもこれも、早く済ませなければ」と焦りや不安を感じると思います。
お子様世代からは、配偶者(夫や妻)を亡くした親のためを思ってやっているのに、親がそのペースについてこられずに、なんか上手くいかない(仕事や子育てで忙しい中でも、精一杯やっているのに・・・)と、憤りを抱える方も少なくありません。
しかし自分が感じる以上に、自分も親も精神的にも肉体的にも不安定な時期です。 いつもは気にならない家族からの一言が、家族だからこそ許せないと過敏に反応してしまう事もあります。
「一刻も早く、日常生活に戻る事」より「自分や親の状態を察しながら、やるべき事の優先順位を相談しながら進める」を心掛けるといいかもしれません。

ABOUT ME
桑原 侑希
桑原 侑希 大手葬儀社にて、10年以上葬儀業に従事し約2000件の葬儀を行ってきました。葬儀のことは勿論、ご葬儀までの終活の相談や、葬儀が終わった後のご供養方法、各種手続きについての相談を受ける内に、その道のエキスパートに。皆さんの葬儀・終活にまつわる「なぜ?」にお答えします。
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